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そ の 理 由
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「おはよう、ルルーシュ」
澄んだ朝の空気を震わせて、明るい声が響いた。
「おはよう、スザク」
振り返って鮮やかに微笑んだルルーシュは、振り上げられた手の傷に目を留めて眉をしかめる。
「おまえ、その手…またやられたのか」
スザクは肩を落として、まじまじと自分の手を見つめた。
「…アーサーって、なんでいつも僕にだけ噛み付くんだろう」
「さあな、何か理由があるんじゃないか」
やっぱり嫌われてるのかなあ、と寂しそうに呟くスザクを横目に、ルルーシュはさらりと話題を変える。
「ところで、今日の帰りは?」
「今日は非番だよ」
「じゃあうちに寄っていけよ。今日は咲世子さんがいないから、夕飯は俺が作るんだけど」
破顔して頷こうとしたスザクが急に立ち止まる。
「あ…今日は…」
「用事でもあるのか」
「うーん…」
珍しく歯切れの悪い返事にルルーシュはすっと目を細めた。
「…なんだ、女か」
スザクが首を傾げつつ、曖昧に頷く。
「隣のクラスの子なんだけど、一緒にご飯でも食べないかって……ええと、なんて名前だったっけ…」
「先約なら仕方ないな」
淡々と言うと、ルルーシュは真っ直ぐ前を向いて歩を早めた。
表情を消して歩くルルーシュを見遣り、歩調を合わせて隣に並んだスザクがあっさりした口調で続ける。
「やっぱり僕、隣のクラスの子に断るよ」
「なんで」
冷たい目で睨み付けるルルーシュに、スザクが邪気のない笑顔を向けて言った。
「きみと一緒にいたいから」
ね、と微笑んで、スザクはルルーシュの顔を覗き込む。
そして手を伸ばし、放心したように立ち尽くすルルーシュの白い頬に触れた。
形を確かめるように、柔らかな唇の上をそっと親指がすべる。
すきだよ、と音を発さずにスザクの唇が動いた。
ぼんやりとスザクの顔を見つめていたルルーシュの目が据わる。
口を開いて、触れる指に半ば本気で歯を立てた。
「いっ・・・!?な、なんで噛むんだよ、ルルーシュ!」
「さあな、理由ぐらい自分で考えろ!」
「え・・・ちょ、ちょっと待ってよ・・・!」
憤然とした表情で歩き去るルルーシュをスザクが慌てて追いかける。
理由なんて、スザクにはきっと一生わからない。
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07-04-15/thorn 07-04-29(revised)/thorn
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