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あ る 朝
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窓の外から小さく鳥たちの囀りが響く。
風に揺れるカーテンの隙間から、朝日に映える木々の緑が覗いた。
ルルーシュは一人、広いベッドの上で安らかな寝息を立てている。
いつも通りの、穏やかな朝。
「おはよう、ルルーシュ!気持ちのいい朝だよ!」
突然、明るく元気な声が響き室内の静寂を破った。
音を立てて勢いよくカーテンが引かれる。
瞼の裏にまぶしい光が差し込み、目を閉じたままルルーシュは眉根を寄せた。
ブランケットを引き寄せ、唸りながら窓に背を向ける。
「だめだよルルーシュ、起きないと遅刻しちゃうよ!」
がくがくと乱暴に肩を揺さぶられるが、頭はまったく覚醒しない。
ブランケットを無理矢理はぎ取られ、やっとの事でルルーシュはベッドの上に半身を起こす。
その目の前に、見慣れた鳶色の髪と生き生きとした翠色の瞳が飛び込んできた。
「おはよう、ルルーシュ!」
「・・・・・・・・・・・・おはよう、スザク」
いまだ微睡みに揺れる紫の瞳を半分だけ覗かせて、ルルーシュはぼそぼそと呟く。
「起きた?あ、じゃあ今すぐ用意するね!」
スザクはにっこり笑って、バタバタと足音を立てて部屋を出ていく。
しばらくして早足で戻ってくると、ルルーシュに持っていたマグカップを手渡してベッドサイドに腰掛けた。
室内にコーヒーの芳ばしい香りが漂う。
「ええと、ルルーシュが毎朝飲むコーヒーってこれでいいんだよね?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「今、落としたばかりだよ。それにしてもすごく苦そうだね、これ」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「今日は朝から補習があるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「じゃあ早く用意しないと。単位足りなくなって卒業できなくなっちゃうよ?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「だいたいルルーシュは学校サボりすぎだよ!いつもどこで何してるの?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
はあ、とスザクは軽くため息をついた。
「ナナリー、昨日から友達の家に泊まりに行ってるんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「どうして君はナナリーがいないとそんなに腑抜けちゃうんだろうね・・・」
「・・・・・・・・・・・・うん」
ルルーシュはコーヒーの入ったカップを両手で抱えたまま、こくりと頷いた。
だめだこれは、とスザクが天を仰ぐ。
「じゃあ僕、午前中は『仕事』だから先に出るね」
軍服のジャケットを羽織りながら、スザクがベッドサイドからそっと腰を上げた。
「・・・・・・スザク」
「何?」
扉へ向かうスザクの背に、サイドテーブルにコーヒーを置いたルルーシュが眠たげな声をかける。
ベッドの上で手招きするルルーシュに、振り返ったスザクが首を傾げた。
「・・・もっとこっち」
「え?」
不思議そうな顔でベッドサイドに近づくスザクの首元を、手を伸ばしたルルーシュが両手で軽く引き寄せる。
端正な顔が近づき、気怠げな吐息が頬にかかるのを感じて、スザクがごくりと息を飲んだ。
白く細い指が曲がった軍服のタイを綺麗に整える。
濡れたように輝く瞳が細められ、低く優しい囁きがルルーシュの唇から漏れた。
「・・・・・・しっかりな、スザク」
「うんっ!ありがとう、ルルーシュ!」
スザクはぎゅう、とルルーシュに抱きつくと、背筋を正して勢いよく立ち上がった。
そのまま全開の笑顔で、元気よく部屋の戸口へと走る。
「じゃあ、行って来ます!ルルーシュも遅れないようにね!」
音を立てて扉が閉まり、部屋に再び静寂が戻った。
スザクが出ていった扉をしばらくぼんやりと見つめた後、ルルーシュはサイドテーブルに置いたカップを再び手に取る。
毎朝飲むコーヒーは、朝が苦手なルルーシュ自らブレンドした特製のものだ。
香り立つ真っ黒な液体をじっと見つめ、ルルーシュはおもむろに一口すすった。
コーヒーの苦みと爽やかな酸味が体の隅々に染み渡り、頭の回路が次々とつながり始める。
一瞬じっと考え込んだ後、ふいにルルーシュが目を見開いて叫んだ。
「・・・・・・・・・・・・な、な、な、なんでいきなりあいつがうちにいるんだっ!?」
「・・・おまえは時々、ものすごく面白いな」
動揺のあまりカップをひっくり返しそうになるルルーシュを、いつのまにか戸口に佇んでいたC.C.が呆れたように眺めた。
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07-06-16/thorn
07-10-22(revised)/thorn
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