そろそろみんな揃った？あ、まだ一人来てない・・・ああそっか、そうだな。まだ始まるまで時間あるだろ。じゃあもうちょっと待つわ。 ・・・うん、そうだよな。待っても来ない、ていうか、来られないんだけど。わかってる。だってあいつ、俺の目の前で刺されたんだぜ。今でもよく覚えてるよ、あの時の事。 とにかく朝から嫌な予感はしてたんだよな。いきなりパレードやるから、エリア11の人間は全員集合、なんつって。ぼやきながら行ってみたら、超悪趣味な行列が始まるだろ。ホント、一体何がしたいんだ、って感じだったよ。 そしたらほら、いきなりゼロ登場じゃん。周りで見てた奴も、みんなぽかんとしちゃってさ。だってゼロは死んだって思ってたし。あの頃、テレビでもネットでも毎日、ゼロは死んだ、これからは新皇帝の時代だって、やたら大騒ぎしてたからな。 でもさ、ゼロが走り始めた時、俺にはすぐ解ったんだよね。ゼロの中身。ていうか、普通わかるよな。弾丸走って避けるとか、アニメのヒーローか、スザクぐらいのもんだろ。そんで俺はちょっと安心したわけ。ああもう大丈夫だって。スザクがいつもみたいに空気読まずにクソ真面目な説教して、あいつが言葉に詰まって、みんなが笑って。そう、いつもの生徒会みたいにさ、会長が手を叩いて一件落着、てな感じで全部終わると思ったんだ。こんな馬鹿馬鹿しい騒ぎは。 ・・・一瞬何が起こったのか、わかんなかったよ。ああ血の色ってホントに赤いんだなあとか、そんな事考えたりして。わけわかんないまま目茶苦茶叫んで、あいつの所に走り出してた。後になって無茶したなって思ったけど、いつの間にかあの台座によじ登ってたわけ。そんであいつに駆け寄ろうとして、黒の騎士団にタコ殴りにされたんだよね。暴漢だと思われたんだろうな、ボコボコに殴られてさあ。でも俺、必死に言ったんだよ。あいつを助けてください、って。ホントは悪い奴なんかじゃないんです、あいつは俺の友達なんです、お願いします、俺の親友を助けてください、ってさ。 涙は出るし、殴られて鼻血は出てるし、もう何がなんだかわかんなくて。とにかくあいつを助けてくれって、馬鹿みたいに繰り返してたんだけど。気が付いたら、俺を殴ってる奴もボロボロ泣いてるわけ。それがほら、玉城さんなんだよね。横から扇さんが止めに入って、そこからあの人達と知り合いになったんだ。俺なんかの結婚式に首相が来るってのは、そういうわけ。 あーあ。あいつに俺の晴れ姿、見せつけてやりたかったなあ。俺がいつか会長と結婚するんだーとか言うとさ、おまえには無理だなんて、あいつ鼻で笑うわけ。でもこうしてちゃんと実現しちゃったもんな。すげーよ俺。会長、あいつに惚れてんの知ってたけどさ、死ぬ気で頑張ったんだから。うん、まあ死ぬ気とかって、それは気持ちだけで。だってホントに死んだら意味ないだろ。だからあいつは肝心の所が抜けてるって言うんだよ。 そう、出来ることなら目の前で言ってやりたいね、ざまあみろって。俺はおまえの分まで幸せになってやる。悔しいか。俺なんかもっと悔しいんだぞ、馬鹿野郎。なんの相談もなしに、勝手な事ばっかりしやがって。おまえの友達やってるこっちの身になってみろってんだ。あーチクショー、なんか涙出てきた。花婿が花嫁より先に泣くとか有りえないよな。 おっと、そろそろ時間だな。じゃあ俺、行くわ。会長、じゃなくてミレイに笑われるかなあ、こんな顔で出て行ったら。頼りない夫だって。 ・・・あいつなら、なんて言うだろう。きっと、胸を張れ、堂々と前を向いて歩けって、肩を叩いてくれると思うんだ。やたら自信たっぷりのいい笑顔で。そういう奴なんだよ。だってわかるんだ、あいつは今でも、俺の一番の親友なんだから。 い つ か 思 い 出 に な る 日 ま で 10-09-15／thorn