Happy Halloween




10月31日、万聖節の前日、つまりハロウィーンで要するに・・・厄日だ。





ばたんと音がして、クラブハウスの自室のドアが突然開け放たれた。

「ルルーシュ、入るよ!」
「・・・入ってくるのと、声を掛けるのが逆だっ、この馬鹿スザク!」

手加減なしで怒鳴りつけたにも関わらず、戸口に現れたスザクは満面の笑みで答える。

「ごめん、ごめん・・・ところでルルーシュ、何してるの?」
「見ればわかるだろう、読書に決まってる。おまえこそ何の用だ」
「それこそ見ればわかるでしょ、ハッピー・ハロウィーン!」

狼男にしてもらったんだ、と嬉しそうにスザクがモコモコした獣の手を広げる。

「ルルーシュはパーティに参加しないの?」
「・・・しない。いつも追い回されて酷い目にあうからな。部屋で大人しくしてるのが一番だ」

ベッドの上で足を投げ出し、傍らに積み上げた本を叩いてルルーシュが言った。
スザクが不満そうに顔をしかめる。

「せっかくのお祭りなのに・・・それじゃつまらないじゃないか」
「つまらなくないさ。おまえこそ、日本にはハロウィーンの習慣なんてないだろう?」
「楽しい習慣ならすぐに受け入れるのが日本人だよ」

スザクは室内に踏み込むと、後ろ手にそっと扉を閉めた。
かちゃん、と鍵のかかる音がして、ルルーシュが顔を不審そうに眉をひそめる。

「おいスザク・・・」
「というわけで、トリック・オア・トリート!」

ベッドサイドに寄ってきたスザクが片手を差し出した。

「・・・あのな、おまえ」
「お菓子をくれなきゃ・・・」

にんまりと狼男が笑って、ルルーシュの隣に腰掛けた。ぎしり、とベッドが沈む。
ルルーシュは慌ててポケットを探り、キャンディを一つ、スザクの目前に突き出した。

「ほら、これを持ってとっとと帰れ」

ぽふ、と毛皮の手の平にキャンディが落とされる。
スザクは器用に包み紙を剥がすと、口の中に放り込んで言った。

「・・・これじゃあ足りない」
「なんだと?」
「だって『両手いっぱいのお菓子』って言ってたじゃないか」

覚えてないの、とスザクがルルーシュの顔を覗き込む。
7年前、ルルーシュがスザクに語ったハロウィーンの様子は、華やかな仮装と両手いっぱいのお菓子・・・ちょっぴり怖くて、楽しいお祭りの話。
ルルーシュは、熱心に耳を傾けていたスザクの目がきらきらと輝いていた事を思い出す。

「あの話聞いてから、ずっとやってみたかったんだ」
「スザク・・・でも俺、本当に何も用意してなくて・・・」
「うん、だから」

これでいいよ、と言ってスザクはぎゅうっとルルーシュに抱きついた。
ふわふわした栗色の髪がルルーシュの頬をくすぐる。

「うわ、こら・・・っ」
「だからさ、お菓子の代わりにルルーシュを、」
「おまえ、それ以上言ったら今すぐ部屋から叩き出すぞ!」

顔を真っ赤にして怒るルルーシュに、懲りた様子もなくスザクが頬を寄せる。

「お菓子をくれなきゃ、いたずらするよ?」
「お菓子をあげても、するんだろうが・・・」

くすくす笑いながら、スザクはルルーシュの腰を強く引き寄せた。
シャツの合間から獣の指先が入り込み、ゆっくりと肌を滑る。
耐え切れず、ルルーシュの唇から吐息が漏れた。

「まったくタチの悪い奴に捕まったもんだ・・・」
「そう、もう逃げられないよ」

おもちゃの牙を剥いた狼男を前に、哀れな犠牲者は観念して瞳を閉じる。
狼男のいたずらは、甘いミルクキャンディの味がした。



07-10-31/thorn