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皇 帝 と 俺
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「まあなんていうの?俺に言わせてみれば有り得ないっつーか・・・要するに全然ダメだね、ありゃ」
摘んだ揚げたてのフライドポテトを指揮棒のようにぐるぐる回しながらリヴァルが言った。
「えー、そうかあ?アレはアレで有りなんじゃねえの?」
「いや、ねーよアレは。あの服からして恥ずかしいだろ、フツー」
「まあな・・・俺らには真似できねえっていうか・・・」
向かいに座った学生服の二人が顔を見合わせて苦笑いする。
「そうそう!あんなダッセー目玉マークとか並の人間には耐えられないね絶対」
ずずず、と音を立ててシェイクをすすりながら、リヴァルはガタつくテーブルに片肘をつく。
「だいたいさあ、初っ端から空気まるで読んでないっつーか、世界中で中継してるようなとこにウチの制服で出るかあ?しかも、ウチの学園とは何の関係ありません、とかさ・・・そんなの誰も信じないっつーの!」
「確かにあの中継にはビビったなー」
「ああ、しばらくみんな生徒会の新しいイベントだって思ってたもんな・・・」
「あのなあ、生徒会のイベントだったら俺が知らないわけないだろ!」
「えー?俺、オマエだけドッキリ企画にハブられてるのかと思ったけど」
真顔で首を傾げる男子生徒の隣で、もう一人があはは、と大口を開けて笑う。
リヴァルはぶすっとした顔でポテトを三本ほど掴むと、クラスメイトの口の中にねじり込んだ。
「ぶほっ、リヴァル何するんだよ!」
抗議に耳を貸さず、すっかり空になったシェイクのカップを手にリヴァルは声を張り上げた。
「ともかく、だ!あいつらには似合わないんだよ、あんなの。ルルーシュの奴は体力ねーし、頭はいいけど実は抜けてるし、いきなりトラブったりするとテンパるし・・・スザクはやたら強えけど、真面目すぎて頭はガチガチだし、空気は読めないし・・・ムリムリ、皇帝とかナイトオブゼロとかぜってー無理!!!」
ほんの一瞬、ざわめくファーストフード店のフロアが静まった。クラスメイトの二人はぎょっとしたように顔を上げ、慌てて取り繕うように声を上げる。
「おいおい!冗談キツすぎだぞ、オマエ!」
「リヴァル、バニラシェイクで酔うなっつーの!」
スンマセンお騒がせしました〜、と周囲に愛想笑いを振り撒くと、二人は身を乗り出してリヴァルの頭をテーブルに押さえつけた。
「ぐあ、何するんだよっ!」
「何するんだ、じゃねーよ、バーカ!」
「デカい声で『皇帝批判』とか、何考えてんだおまえは」
クラスメイトの一人が声を潜めつつ、辺りを見回す。
「リヴァルも知ってるだろ、本国じゃ新皇帝に従わない奴らは片っ端から粛清されてるって。ここだって誰が聞いてるかわからねーんだぞ!?捕まったらどーすんだよ」
「・・・勝手に捕まえればいいじゃん」
頭を押さえ付ける手を振り払って、リヴァルが唸った。
「俺はあいつらの友達だぞ!?このくらい言う権利はある!ルルーシュは皇帝なんて向いてない。生徒会の副会長だってちゃんと務められない奴だぞ?皇帝なんかより先にこっちだろ!?違うかあ!?」
「あーハイハイ、わかったわかった。わかったからもうちょい静かにな、リヴァル」
「荒れてるなー。生徒会、今は実際おまえ一人でやってるもんな」
「くそう、やってられっかよチクショー・・・」
「よーしわかった!今日はとことん飲め。そして食え。俺達がコーラとアップルパイをおごってやる」
やさぐれてテーブルに伏したリヴァルの肩を叩いて、二人が立ち上がる。
「・・・チーズバーガーとソフトクリームも食いたい」
上目遣いで訴えると、しょうがねえなあ待ってろ、と笑ってクラスの友人達は階下にあるカウンターへと向かった。一人残されたリヴァルは顔を伏せたまま呟く。
「捕まえたきゃ捕まえろってーの・・・そしたら面と向かって思いっきり文句言ってやるからさ・・・」
クラスメイトが帰ってくるまでの間、リヴァルはルルーシュとスザクに会った時の文句を考えることにした。まずはあのド派手でセンスのない衣装について、友人としてツッコミを入れてやらねばならない。生徒会業務のサボりについては先代会長に代わって説教してやる。授業のノートについては学食のおごり5回分と交換だ。次の学園イベントの企画についても相談して決めよう。それから――――話したい事は山ほどある。だから皇帝と騎士なんて偉そうな事言ってないで、今すぐ学園に帰って来いというのだ。
だらしない姿勢のまま、リヴァルはポテトの残りを口に運んだ。揚げたてだったフライドポテトはすっかり萎びて、底に残った塩の味ばかりが口の中に広がる。
「ああ、しょっぱいな・・・」
ひどく情けない声は店内の喧騒に紛れて誰の耳にも届かなかった。
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08-09-09/thorn
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