盤 上 遊 戯






隙なく整えられた黒の布陣を見て、男はなぜか満足げに両手を打ち鳴らした。

「すごいすごい、さすがだね、ルル」

不快そうに睨み付けるルルーシュに向かって、マオは芝居がかった仕草で手を広げてみせる。

「大丈夫、思考を読んだりしないよ。せっかくのゲームが台無しだろう?」

チェスって面白いよね、あれから僕も少し勉強したんだ、
ねえルルはいつからチェスを始めたの、誰に習ったの、

饒舌に喋り続けるマオを無視して、ルルーシュは黒の王を手に白の歩兵を打ち倒す。
倒れた駒が盤上から転がり落ちた。

「相変わらず、きみはその駒がお気に入りなんだね」

馬鹿にするかのような口調で、マオは対面するルルーシュの顔を覗き込む。

「でもそれ、本当にキングだと思ってるの」

ルルーシュが手にした駒に目をやると、それは確かにキングではなく、つるりとして装飾のないポーンであった。
それどころか、盤上の役駒が全てただの歩兵に変わっている。

「ポーンはさ、最後のラインまで来ると、どの駒にでも成る事ができるんだよね」

唖然とするルルーシュを後目に、マオは飄々とした態度で白の歩兵を手に取る。

「でも絶対に、王様には、なれない」

ねえそうでしょうルル、僕ちゃんと覚えたんだよ、君ともう一度ゲームがしたくて、
だって僕らは同じなんだ、同じ駒なんだよ、
彼女の、

「さあ、次はルルーシュの番だ」

歩兵ばかりが連なる盤上を前に、マオがゆっくりと両手を打ち鳴らした。




07-04-04/thorn