盤 上 遊 戯






からん、と音を立てて白の王が倒れた。

「チェックメイト」

会心の笑みで黒の王が勝利を宣言する。

「また負けた・・・」
「おまえがやろうって言ったんだぞ」

天を仰ぐスザクに向かって、ルルーシュが楽しげに笑う。
普段、他人の前ではあまり見せない豊かな表情だ。

「ねえ、なぜルルーシュはキングばかり動かすの?」

盤上に残った白の駒を丁寧に脇に並べながらスザクが尋ねる。

「王様が動かないと、部下がついてこないだろう?」
「そうかもしれないけど、王様が倒れたら、全部おしまいじゃない?」

スザクは戯れに指先で黒の駒を一つ弾いた。空虚な音を立てて駒が転がる。

「ナイトもポーンもルークも、みんな王様を護るためにいるのに、必要ないみたい」
「・・・別にいらないわけじゃない」
「でもきみは本当に強いから、王様の駒だけあればいいよね」

このぐらいのハンデはもらわないと。
そういってスザクは楽しげに黒の駒を一つ、また一つと盤上から弾き落とした。
ルルーシュは表情を消して転がり落ちる駒を見つめる。

「一人ぼっちの王様だ」

冗談めかして笑いながら、白の騎士は独り佇む黒の王を打ち倒した。




07-03-29/thorn