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盤 上 遊 戯
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白の王は迷いなく駒を選び取ると、自陣に迫り来る黒の騎士を打ち払った。
相対する黒の王はそれを見遣り、厳しい表情で残った駒に手を伸ばす。
白の王は椅子にゆったりと腰掛け、自軍の駒が倒れる様を微笑みを浮かべて眺めた。
盤上を見れば白がやや優勢、というところであったが、勝負の行方は定かではない。
二人が駒に手を伸ばす度に、ひとつ、またひとつと互いの駒が消えていく。
ふと、白の王の手が止まった。
顎に手を添えて考えるような仕草をした後、実にあっさりとした様子で自ら王の駒を倒す。
――――それは投了の合図だった。
「降参だ。腕を上げたね、ルルーシュ」
「何を・・・!まだ手はあるだろう!」
ルルーシュはその勝利を喜ぶどころか、激高して机に拳を叩きつけた。
華奢な細工が施された机が悲鳴を上げ、駒がバラバラと床に転がり落ちる。
怒りに震える若き王を前に、シュナイゼルは幼子に言い含めるようにゆっくりと言葉を紡いだ。
「ああそうだね、まだ手はあったかもしれない・・・・・・だが、効率がよくない」
ルルーシュはきつく唇を噛むと、微笑むシュナイゼルを睨み付け、低く声を絞り出した。
「ではもう一度、」
「残念だが、もう時間なんだ」
流麗な細工が施された金の懐中時計に目を走らせ、シュナイゼルが椅子から腰を上げる。
「私は行かねばならないのだよ・・・おまえにはまだ他にも遊び相手がいるだろう?」
シュナイゼルは席を立つと、その長身を屈め、歳の離れた弟に手を伸ばした。
頭に伸ばされた手を振り払い、椅子に座したままルルーシュが悔しげに唇を震わせる。
シュナイゼルは苦笑しながら、宥めるようにその肩を軽く叩いた。
「すまないね。時間が空いたら、またおまえのゲームに付き合ってあげよう、ルルーシュ」
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07-06-15/thorn
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